元アニメ業界人が語る、作画崩壊になるまでにたどる道筋

皆さんは作画崩壊という言葉を聞いたことはありますか?

作画崩壊とはテレビアニメにおいて突然絵のレベルが低下してしまっている状態でテレビ放送されてしまうことを言います。本来ならないようにし、放送する前に全力で直し、世の中に出さないようにするのですが今は直さないで放送することが増えてきました。

なぜ、このようなことが起きるのか今回はアニメ業界最近まで制作進行をしていた私がご説明できれば思います。

作画崩壊の原因

テレビアニメは30分で3000枚から4000枚の絵が必要になります。当然ながら1人だけでは作れませんし、様々な工程が必要になります。

作画崩壊が起きる原因になる主な工程は原画工程、動画工程、仕上げ工程です。

まず、原画とはアニメでキャラなどの動きの基本になる絵です。例えばこの絵で指の本数が5本のはずが6本で描いてあった場合は作画崩壊の原因になります。

しかし、この原画をチェックし、直す役職がいます。それが作画監督です。

作画監督は指の本数はもちろん、キャラクターの顔が似ているかどうかも見て、直します。そのため、本来なら作画崩壊レベルの絵はこの先の工程に行かないはずなのですが、万が一作画崩壊レベルの絵が先に進むと次の工程が動画工程です。

動画工程では原画と原画の間の絵を描きます。原画は動きの基本になる絵と書きましたが原画状態ではかくかくとした動きにしかならないのでそれをぬるぬると動かすために動画工程で絵を足します。

また、原画時にある絵もここで清書します。例えば動画時に10枚書かないといけない右腕をあげるシーンで5枚目だけ右腕を上げていなかったとします。これをそのまま映像にすると一瞬、明らかに動きがおかしいことになってしまいます。

また原画を清書したが明らかにキャラクターの顔が清書できていないといった場合があります。

これを直すのが動画検査です。動画検査は動画の動きやキャラクターの顔を見て、直したり、動画マンにやり直しを指示します。これにより作画崩壊を防いでいます。

次に色を塗る工程、仕上げ工程です。例えばそれまでは黒だった髪の色が一瞬だけピンクになったらおかしいですよね。

これを検査し、防ぐのが仕上げ検査です。仕上げ検査では決められた色で塗っているか一枚一枚検査します。これにより色が違うのを防いでいるのです。

そして最後に映像になったものを放送前に見て、間違えが無いかどうか、全ての工程のトップが見ます。

これをラッシュチェックと言います。どうでしょうか?

これだけ読んでいると各工程でチェック工程があり、作画崩壊しているアニメが放送されている理由がわからないと思います。

今、作画崩壊が増えている原因

簡単にいうと各チェック工程が崩壊しているからです。

今現場では原画をみる作画監督は同時に2から3作品を担当していて、スケジュールもなく、「この10カットの原画を明日までに見ないと放送に間にあわない」なんて話もよく聞きましたし、私が制作進行というスケジュール管理を仕事を担当していた作品では全ての絵を作画監督に見てもらうと放送に間に合わないので複数のカットを作画監督に見せずに次の工程に回し、動画検査も間に合わず、中国で描いた絵を中国で塗り、仕上げ検査だけするなんてことが実際にありました。

こうなってしまうと間違った物が間違ったまま仕上がってしまうので作画崩壊が起きるのです。

私の担当していた作品の場合、ラッシュチェックとその後の修正ができたのでそこまで深刻な作画崩壊は起きませんでしたがラッシュチェックの時間もない作品の場合、チェック工程をしていないもの、そのまま放送するという、まさしく出たとこ勝負になってしまうのです。

このような状況になってしまっている原因は深刻な人材不足と作品数の多さが考えられます。

本来、原画マンと言われる人になるには動画マンとして経験を積み、絵の理解を深めてから原画マンになれるのですが作品本数が多いために人数が足りず、経験が浅い人を原画マンにしてしまう制作会社が多いのです。

こうなってしまうと絵の修正をする作画監督の負担が増え、しかも、作画監督も経験の浅い原画マンだったりと悪循環がつづいてしまっているのです。

私がやっていた制作進行という仕事は原画マンや作画監督との連絡も主な仕事の一つなのですがどの原画マンに連絡しても仕事を掛け持ちしていて、スケジュールが考えられないような作品が多かったです。

アニメ業界の対応

この文書を読んでいる方の中で将来アニメ業界で働きたいという方もいるかもしれません。このままでは希望がなく、不安ばかりを与えてしまうかもしれないのでこの状態を改善するためにアニメ業界が行っていることを書きたいと思ったのですが、すいません。アニメ業界はこの状態を改善するような大きなことは行っていないんです。

作品本数も変わらずに多いですし、賃金も一般企業に比べると低いです。しかも、アニメを観ている人のアニメに求めるレベルはどんどん上がってきています。なので、これから作画崩壊はさらに多くなるのではないでしょうか。

最後に

アニメは観ている人に夢や希望を与えるものだと思っています。

私自身、アニメに希望をもらって、そんなアニメを自分で作りたくなってアニメ業界に入りました。しかし、今のアニメ業界は作画崩壊は仕方がない、総集編にならなければ大丈夫、といったとても夢を与えているとは思えない状態になってしまっています。

これでは日本が誇るアニメーションは衰退の一途をたどってしまうと思います。ぜひ、アニメ業界には作画崩壊を起こさない。そして、作っている側も楽しんで作っていける。そんな業界になってほしいと強く願います。

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