霊感女子が地縛霊のいるというアパートで除霊をした話。

私が通っていた大学は、他県から来る学生が多かったので、学校の周辺にはアパートがたくさんありました。

大学生活に慣れ、バイトなどして懐に余裕が出てくると、仕送りの少ない学生たちは、より安くていい物件を探し始めます。

ただしいくら安くてもいわくつきの物件もあります。

ある日、同じサークルの後輩に相談を受けました。

後輩の彼女が最近安いアパートに引っ越したのだけれど、夜中になると変な物音が聞こえたり、人の気配を感じたリするというのです。彼女の方は心霊現象のような事を心配しているようですが、後輩の方は変質者を心配していました。女子学生の一人暮らしの多い地域には、よく変質者が現れます。私は十数年ほど合気道を習っていて、前にサークルの女の子につきまとうストーカーを捕まえた事がありました。

万が一、ストーカーとか変質者だった場合、事件になる前になんとかしてあげた方がいいので、私は後輩につきあって彼女のアパートに行ってみました。

その娘の住むアパートは大学から十五分ほどのところにあり、神社の裏手にあたるせいか、背後に大きな木々が立ち並び、学生街にしては静かなところでした。

部屋は二階の右端にあり、中に入れてもらうと、もうひとり女の子がいました。後輩の彼女によると同じゼミの子で、霊感が強いとの話です。要するに変質者なら私、幽霊ならその娘に対処してもらうつもりのようです。

とりあえず四人でコンビニで買った弁当を食べ、テレビを消して、夜中を待ちました。霊感が強いという娘はあまりノリのいい方ではなく、もっぱら私と後輩がぼそぼそと話をしながら、時間が過ぎて行きました。

深夜一時過ぎの事です。

突然、天井の辺りで、何かが裂けるようなピシッという音が響きました。外気温との差などで、そんな音がする事はよくある話です。私は気にとめませんでしたが、霊感女子は立ち上がり、じっと天井を見つめています。続いて玄関のドアに何かがドンと当たるような音がしました。今度は私が立ち上がり、ドアを開けてみましたが、誰もいませんし、どこかに潜んでいる様子もありません。ドアを閉めて、部屋の中に戻り、その様子を報告すると、霊感女子がふいに「間違いないわ」と言い出しました。

その娘によれば、これらの現象は、ここにアパートが立つ前にあった林の中で、首を吊った若い女性の地縛霊のせいだとの事。後輩の彼女は顔をしかめて身を震わせ「引っ越してきたばかりで、またすぐに引っ越すお金なんてないし」と涙声になりました。

すると霊感女子は「大丈夫」と頷き、塩を用意するように言いました。後輩の彼女はすぐに台所から塩を持ってきました。霊感女子は窓を開けて、少し突き出た枠のところに盛り塩をし、玄関にも同じようにしました。また部屋の一番高い場所になっている衣装タンスの上に置きました。それからおもむろに手を合わせて、ぶつぶつと何かを唱え始めました。

異様な雰囲気にのまれつつも、私は半信半疑のまま、一部始終を黙って見ていました。

そんな中、いきなり上からバンと、車のドアを思い切り閉めたような大きな音がして、さすがに私も心臓が口から出るかと思うほど驚きました。

霊感女子は大きく頷き、後輩の彼女に笑顔で「もう大丈夫」と告げました。

事実、その夜はもう何も起こりませんでした。

朝になり、後輩とその彼女を残して、私と霊感女子は部屋を出ました。

アパートの外に出て、ふと霊感女子に何か話しかけようと振り返った時です。アパートの方から、何か黒い影のようなものが出てきて、霊感女子の背中に張りつき、すうっと消えていくのを見てしまいました。思わず「あっ」と声を上げそうになりましたが、徹夜明けでもあるし、何かの見間違えだろうと思い、何も言いませんでした。

その後、後輩の彼女の部屋で、奇妙な物音はしなくなったと聞きました。

どうしても気になって、霊感女子について尋ねると、あれから間もなく、事情があって大学をやめたと事。

結局、その娘には本当に霊感があったのか、あの黒い影は見間違いだったのか、何もわからないままでした。

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